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東京地方裁判所 昭和58年(特わ)3395号 判決

裁判所書記官

久保田堅蔵

本店所在地

東京都千代田区平河町二丁目四番四号

富士出版販売株式会社

右代表者代表取締役

大澤勝

右同

平岩實

本店所在地

富山県富山市鹿島町一丁目八番四号

富士雑誌販売株式会社

(右代表者代表取締役鵜澤正和)

本籍

東京都中野区南台二丁目一〇番地

住居

同区南台二丁目三〇番五号

会社役員

中田啓之

昭和三年一月二四日生

右富士出版販売株式会社、富士雑誌販売株式会社に対する各法人税法違反被告事件、右中田啓之に対する法人税法違反、所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官上田勇夫出席のうえ審理を遂げ、次のとおり判決する。

主文

一、被告人富士出版販売株式会社を罰金二八〇〇万円に、被告人富士雑誌販売株式会社を罰金九〇〇万円に、被告人中田啓之を懲役二年六月及び罰金六〇〇〇万円にそれぞれ処する。

二、被告人中田啓之において、右罰金を完納することができないときは、金一〇万円を一日に換算した期間、同被告人を労役場に留置する。

三、被告人中田啓之に対し、この裁判確定の日から四年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人富士出版販売株式会社(以下、「被告会社富士出版販売」という。)は、東京都千代田区平河町二丁目四番四号(昭和五六年三月二五日以前は同区神田松永町二三番地、同五五年一月二八日以前は同区三崎町三丁目三番三号)に本店を置き、雑誌・書籍の出版及び販売等を目的とする資金本五〇〇万円の株式会社であり、被告人富士雑誌販売株式会社(以下、「被告会社富士雑誌販売」という。)は、富山県富山市鹿島町一丁目八番四号に本店を置き、雑誌・書籍の出版及び販売等を目的とする資本金五〇〇万円の株式会社であり、被告人中田啓之(以下、「被告人」という。)は、右各被告会社の実質経営者として同各会社の業務全般を統括するとともに、個人で金員の貸付及び雑誌の販売等を行っていたものであるが、

第一、被告人は、被告会社富士出版販売の業務に関し、法人税を免れようと企て、売上の一部を除外し、あるいは架空仕入を計上するなどの方法により所得を秘匿したうえ、

一  昭和五四年一一月一日から同五五年一〇月三一日までの事業年度における被告会社富士出版販売の実際所得金額が一六八、五九〇、五七三円(別紙(一)修正損益計算書参照)あったのにかかわらず、昭和五五年一二月二七日、東京都千代田区神田綿町三丁目三番地所在の所轄神田税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が、五五、九〇八、二八三円でこれに対する法人税額が二一、〇一五、二〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(昭和五九年押第二六四号の1)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額六六、〇七一、三〇〇円と右申告税額との差額四五、〇五六、一〇〇円(別紙(六)税額計算書参照)を免れ、

二  昭和五五年一一月一日から同五六年一〇月三一日までの事業年度における被告会社富士出版販売の実際所得金額が一六八、一九四、二八五円(別紙(二)修正損益計算書参照)あったのにかかわらず、昭和五七年一月四日、東京都千代田区神田錦町三丁目三番地所在の所轄麹町税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が八、七七二、七一三円でこれに対する法人税額が二、七二四、二〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(同押号の2)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額六九、六八一、四〇〇円と右申告税額との差額六六、九五七、二〇〇円(別紙(六)税額計算書参照)を免れ、

第二、被告人は、被告会社富士雑誌販売の業務に関し、法人税を免れようと企て、売上の一部を除外し、あるいはたな卸の一部を除外するなどの方法により所得を秘匿したうえ、昭和五六年一月二八日から同五六年一二月三一日までの事業年度における被告会社富士雑誌販売の実際所得金額が九二、一五七、一九一円(別紙(三)修正損益計算書参照)あったのにかかわらず、昭和五七年二月二五日、富山県富山市丸の内一丁目五番一三号所在の所轄富山税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が八、五九四、四六二円でこれに対する法人税額が二、六三四、三〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(同押号の3)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額三七、七三〇、七〇〇円と右申告税額との差額三五、〇九六、四〇〇円(別紙(七)税額計算書参照)を免れ、

第三、被告人は、自己の所得税を免れようと企て、貸金にかかる利息収入及び雑誌販売の売上の一部を除外するなどの方法により所得を秘匿したうえ、

一、昭和五五年分の実際総所得金額が一四三、九四〇、二七六円(別紙(四)修正損益計算書参照)あったのにかかわらず、昭和五六年三月一六日、東京都中野区中野四丁目九番一五号所在の所轄中野税務署において、同税務署長に対し、同五五年分の総所得金額が四一、五九五、〇九八円でこれに対する所得税額が一六、〇三九、四〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書(同押号の4)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により同年分の正規の所得税額八三、六〇八、七〇〇円と右申告税額との差額六七、五六九、三〇〇円(別紙(八)税額計算書参照)を免れ、

二、昭和五六年分の実際総所得金額が一九一、五六四、三二二円(別紙(五)修正損益計算書参照)あったのにかかわらず、昭和五七年三月一五日、前記中野税務署において、同税務署長に対し、同五六年分の総所得金額が一七、六三七、五六七円でこれに対する所得税額が一、四九二、〇〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書(同押号の5)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により同年分の正規の所得税額一〇九、八三五、三〇〇円と右申告税額との差額一〇八、三四三、三〇〇円(別紙(八)税額計算書参照)を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示事実全般につき

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官に対する供述調書四通

一  平岩實、知本要二、小張英俊、平野孝行、成田伸太郎、中田米四勝(五通)の検察官に対する各供述調書

一  登記官作成の登記簿謄本四通

判示各事実ことに過少申告の事実及び別紙(一)ないし(五)修正損益計算書の公表金額につき

一  検察事務官佐野周二作成の昭和五九年一月二三日付捜査報告書

一  押収してある法人税確定申告書三袋(昭和五九年押第二六四号の1ないし3)、所得税修正申告書・確定申告書一袋(同押号の4)、所得税確定申告書一袋(同押号の5)、収支明細書一通(同押号の6)

判示各事実ことに別紙(一)ないし(五)修正損益計算書中の各当期増減金額欄記載の内容につき

一  検察事務官佐野周二作成の昭和五九年三月三日付捜査報告書

判示第一の各事実ことに別紙(一)、(二)修正損益計算書中の各当期増減金額欄記載の内容につき

一  麹町税務署長作成の昭和五八年八月二日付証明書

一  収税官吏作成の次の各調書

1  売上調査書

2  仕入調査書

3  期末商品棚卸高調査書

4  役員報酬調査書

5  役員賞与調査書

6  役員賞与の損金不算入額調査書

7  給料調査書

8  預金利息調査書

9  受取利息調査書

10  価格変動準備金調査書

11  損金算入事業税調査書

一  検察事務官三橋弘隆作成の昭和五八年一〇月三一日付捜査報告書

判示第二の事実ことに別紙(三)修正損益計算書中の各当期増減金額欄記載の内容につき

一  富山税務署長作成の昭和五八年八月二三日付証明書

一  収税官吏作成の次の各調査書

1  売上調査書

2  仕入調査書

3  期末商品棚卸高調査書

4  役員報酬調査書

5  給料手当調査書

6  旅費交通費調査書

7  債権取立料調査書

8  貸倒償却調査書

判示第三の各事実ことに別紙(四)、(五)修正損益計算書中の各当期増減金額欄記載の内容につき

一  収税官吏作成の次の各調査書

1  売上調査書

2  仕入調査書

3  接待交際費調査書

4  修繕費調査書

5  消耗品費調査書

6  支払手数料調査書

7  雑費調査書

8  給料賃金調査書

9  支払利息調査書

10  地代家賃調査書

11  減価償却費調査書

12  家賃収入調査書

13  租税公課調査書

14  損害保険料調査書

15  地代家賃調査書

16  支払利息調査書

17  償却費調査書

18  管理費等調査書

19  その他の経費調査書

20  配当収入調査書

21  給与収入調査書

22  給与所得控除調査書

23  貸金収入調査書

24  紹介手数料調査書

25  旅費交通費等調査書

26  不渡手形返却手数料調査書

27  支払利息調査書

28  貸倒損失調査書

29  売上調査書

30  売上原価調査書

31  原稿料収入調査書

32  必要経費調査書

33  譲渡収入調査書

34  譲渡原価調査書

35  立退料調査書

36  手数料調査書

37  造作調査書

38  支払利息調査書

39  ゲーム機取得費調査書

40  雑費調査書

41  地代家賃調査書

42  電話代調査書

43  特別控除額調査書

44  所得控除額調査書

45  源泉所得税調査書

一  検察事務官三橋弘隆作成の昭和五九年一月一三日付捜査報告書

(法令の適用)

一  罰条

(一)  被告会社富士出版販売

判示第一の一の所為につき、昭和五六年法律第五四号による改正前の法人税法一五九条一、二項、一六四条一項、判示第一の二の所為につき、右改正後の法人税法一五九条一、二項、一六四条一項

(二)  被告会社富士雑誌販売

右改正後の法人税法一五九条一、二項、一六四条一項

(三)  被告人

判示第一の一の所為につき、行為時において右改正前の法人税法一五九条一項、裁判時において右改正後の法人税法一五九条一項(刑法六条、一〇条により軽い行為時法の刑による。)、判示第一の二、第二の所為につき、右改正後の法人税法一五九条一項、判示第三の一の所為につき、行為時において昭和五六年法律第五四号による改正前の所得税法二三八条一、二項、裁判時において右改正後の所得税法二三八条一、二項(刑法六条、一〇条により軽い行為時法の刑による。)、判示第三の二の所為につき、右改正後の所得税法二三八条一、二項

二  刑種の選択

いずれも懲役刑及び罰金刑の併科(被告人)

三  併合罪の処理

(一)  被告会社富士出版販売

刑法四五条前段、四八条二項

(二)  被告人

刑法四五条前段、懲役刑につき同法四七条本文、一〇条(刑及び犯情の最も重い判示第三の二の罪の刑に加重)、罰金刑につき同法四八条二項

四  労役場留置

刑法一八条(被告人)

五  刑の執行猶予

懲役刑につき、刑法二五条一項(被告人)

よって主文のとおり判決する。

(裁判官 羽渕清司)

別紙(一) 修正損益計算書

富士出版販売(株)

自 昭和54年11月1日

至 昭和55年10月31日

〈省略〉

別紙 修正損益計算書

富士出版販売(株)

自 昭和54年11月1日

至 昭和55年10月31日

〈省略〉

別紙(二) 修正損益計算書

富士出版販売(株)

自 昭和55年11月1日

至 昭和56年10月31日

〈省略〉

別紙(三) 修正損益計算書

富士雑誌販売(株)

自 昭和56年1月28日

至 昭和56年12月31日

〈省略〉

別紙(四) 修正損益計算書

中田啓之

自 昭和55年1月1日

至 昭和55年12月31日

〈省略〉

別紙 修正損益計算書

中田啓之

自 昭和55年1月1日

至 昭和55年12月31日

〈省略〉

別紙(五) 修正損益計算書

中田啓之

自 昭和56年1月1日

至 昭和56年12月31日

〈省略〉

別紙 修正損益計算書

中田啓之

自 昭和56年1月1日

至 昭和56年12月31日

〈省略〉

別紙(六) 税額計算書

〈省略〉

〈省略〉

別紙(七) 税額計算書

富士雑誌販売(株)

〈省略〉

別紙(八) 税額計算書

中田啓之

〈省略〉

〈省略〉

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